2017年11月12日日曜日

絶滅危惧職

今年ももうあと二ヶ月を切りました。
前回ブログを書いた時はまだ桜が咲く前のことで、それから半年。白い悪魔(と、私は雪を呼びます)がやって来る季節となりました。
皆様いかがお過ごしですか、校正の佐々木です。

さて、このブログをお読みいただいている方の中で、日本の伝統芸能に触れたことがある方はどれくらいいらっしゃるでしょうか?
日本の伝統芸能といえば歌舞伎・狂言・能・文楽・落語などなど…。私は先日、初めて「講談」を観て参りました。先にあげたうち、能以外は体験済みでしたが(能は確実に寝そうです…)、いやぁ、面白かったですね、「講談」。
釈台と呼ばれる小さな机の前に座り、張り扇で拍子をとりながら語られる物語に、ぐぐっと引き込まれてしまいました。

独演会をなさった神田松之丞さんは、まだ二つ目(真打前)ですが、今、人気の講談師さんです。
そもそも講談師は日本に80名程しかおらず(ちなみに落語は800名程)、そのうち半分が女性。残りの男性40名のうち、34歳の最年少が松之丞さんなのです。
そんな訳で松之丞さん曰く、講談師とは貴重な「絶滅危惧職」なのだそうです。

その日の演目は、相撲を題材にした「谷風の情け相撲」、ご存知「真景累ヶ淵」より「宗悦殺し」、そして最後は「赤穂義士銘々伝」より「神崎の詫び証文」の3本。
初めて観る講談でしたが、元々芝居好きな身としてはどこか「一人芝居」を見ているようで、張り扇の拍子一つで、簡単にその話の世界へと入り込んでおりました。笑・恐・涙と、各演目でそれぞれの感情を揺り動かされて、見終わった後は脳がグラグラしてしまいました。

その中でも、やはり怪談好きの私としては「宋悦殺し」を観られたのが、嬉しかったです。ちょっと想像力過多なので、松之丞さんの語りに合わせて私の目の前に血しぶきが飛びましたけど。

ところで、将来AIが人間の仕事を奪うだろう、と巷では言われておりますが、校正という仕事もその一つではないでしょうか。確実にAIの方が正確ですし、「遅い!」「また、間違ってる!」「原稿が揃ってない!」と文句も言いません。
ということは、校正も「絶滅危惧職」です。皆様、優しく丁寧に扱ってください、なんせ貴重なんで。